インタビュー『この人と60分』

ドクターエルウィン/石渡悦堯社長

 ドクターエルウィン(東京都千代田区、石渡悦堯社長)は2月1日から、主力となるベーシックスキンケアライン「ドクターエルウィン」シリーズを全面リニューアル発売した。90年のブランド誕生以来初の刷新となるシリーズについて、同社グループ企業で研究開発とOEMを行う「コスメサイエンス」、カウンセリング販売主体の「ドクターベルツ」の代表でもある石渡悦堯社長に話を聞いた。

 <チームでの連携>
 
これまでは、コスメサイエンス、ドクターベルツ、ドクターエルウィンの3つのグループで構成されていたが、3社間の結び付きが思ったより弱いのではないかということで、昨秋からそれまでの「コスメサイエンスグループ」というものから、「チームコスメサイエンス」へと呼称を変更した。カウンセリング市場とセルフ市場では全く異なるマーケットではあるが、実際に商品を使っていただくお客様はマーケットの特性とは関係なく、あくまでも一人の消費者でしかない。こうした消費者の特性、動向、ニーズに対応するには、異なるマーケットを横断するようなグループ間の強い結びつきが不可欠であるとの思いから、より強い結びつきを表す「チーム」という表現を用いることにした。
 結果、横断的なチーム体制としたことで、3社それぞれに寄せられるユーザーの声がより多く、広く聞こえるようになった。

 
<シェア拡大へ>
 今から2年前、95年にドクターベルツが設立から20年を迎えたことを契機に、経営を10年というスパンで考えてみた。これまでの10年、20年ではなく、これからの10年間の方向性をどう位置づけ、どのように進んでいくのかということだが、結論から言うと、市場でのシェア拡大を目指すということになる。
 核家族化や晩婚化、少子高齢化、人口減時代などによって社会構造が大きく変化し、市場ではボリュームを追う時代ではなくなっていて、今後は、質や価値を追求する時代となっていくことだろう。しかし、質や価値について我々がいくら声高に素晴らしい価値を提供する製品やサービスについて叫んでも、その声はなかなか伝わりにくいのが現状である。たとえて言うなら、離島から大きい声で呼んでも本島まではなかなか届かないことをイメージしてもらえるとわかりやすいだろうか。声を届けるためには、本島に強固な基地を作り、そこから発信しなければならない。そのためにシェアの拡大が必要になってくるということだ。
 しかし、ここで求めるシェアとは、化粧品業界の総売上高に対するもの、即ち売上シェアではなく、化粧人口における自社製品の購入・使用率で考えている。結果的に売上高という数値で見ていくことにはなるだろうが、あくまでも目安であり、売り上げの追求ということではない。

 
<ベルツの延長線に>
 ベルツは肌タイプ別にきめ細かく対応できるよう、製品作りを行い、カウンセリングを通じて販売を行ってきた。こうしたきめ細かな対応という基本コンセプトはそのままに、セルフ市場向けの化粧品を展開しようということがエルウィンのスタートになり、今年で17年目となる。10年スパンで考える上では、あと3年待たなければ20年という区切りを迎えられないわけだが、先にも述べたようにチームとして連動させていくという観点から、エルウィンも現状を分析することになった。正直に言うと、余りよい状況にあるとは言えない。
 コスメサイエンスとベルツについては、それぞれに方針が明確になっており、現在はその進むべき方向に沿って着々と歩を進めている段階だ。そして、ベルツのコンセプトの延長線上としてやってきた経緯を持つエルウィンは、「皮膚科学をベースにした素肌美づくり」、化粧はファッションではなくサイエンスだということを前面に打ち出して展開してきた。ところが、セルフ市場ではそういう堅苦しいことばかりではなく、それまでとは視点の違うもの、ユニークなものなど時代と共にヒットするものがある。それは、豆腐や豆乳、アロエやゴマなど自然をテーマにしたものであったりと、若い女性は古来からあるものを古いと感じるよりも、逆に新しいと捉えているのではないだろうか。そうしたものの必要性を感じて製品作りに取り入れた結果、多くの消費者から支持を得ることができた。ただ、こうした製品は、本来のエルウィンの基本コンセプトにはなく、生まれ出てこないものであった。

 <新事業部と原点回帰>
 人気が出てボリュームが広がった結果、本来の領域が狭まってしまった。この点は是正しなければならない。こうした流れに区切りをつけなければならないということで、エルウィンの中に「安心事業部」を設けることにした。そこでは主に、自然素材などをもとにした製品を販売しており、福島県須賀川市特産の「岩瀬キュウリ」を使った化粧水「胡瓜美水」もその一例だ。これはコスメサイエンスがOEM受託をして共同開発・生産をした製品をエルウィンの販路を通じて流通させているもので、ほかにも全国各地の特産品を活かした化粧品の開発・販売が可能な事業として考えている。
 こうして設けた安心事業部に対して、エルウィン本来の道でもあるスキンケア市場を今一度見てみると、効能など即効性を訴えるものが多い。また、そうした即効性を消費者も求めているのだろう。
 しかし、スキンケアというものは、毎日よい化粧品を使い続けること、毎日のケアがあってこそ、アンチエイジングや美白などといったポイントケアが生きてくるものだ。ベーシックなスキンケアをおろそかにしてポイントケアにばかり目を向けていてはいけないのではないか、ということで一番のベーシックな部分である「エルウィン」シリーズをリニューアルし、新生エルウィンシリーズを開発した。
 このシリーズを一つの起爆剤として、スキンケアをもう一度啓蒙し、そしてその上にたってアンチエイジングや美白などを訴求していこうと考えている。17年間の集大成であり、17年目の原点回帰である。

 <伝えるために>
 パッケージデザインについては、セルフ市場の特性として消費者が見て注目してもらうことが重要。デザイン性に優れたものやインパクトのあるものなどだが、デザイン性を重視すると上品過ぎ、インパクトを狙ってアピールしすぎるとデザイン性が損なわれる。今回は、二律背反するぎりぎりのところで高品質なものとして表現できた。
 このようにして行ったリニューアルだが、今までのように関東圏中心ではなく、シェア拡大のためには、全国への情報伝達網を整備しなければならないということで、販売体制を大幅に変更した。新エルウィンシリーズを1000店舗ほど配荷できれば、と考え新しい営業スタッフを迎え入れてスタートさせたばかりだ。
 このベーシックなラインをベースに、安心事業部も含めた広がりを今後見せていく。
 同時に発売されるトライアルサイズも、エルウィンを初めて知るきっかけ作りにはいいが、やはり店頭でのプロモーションが重要になる。そのために、スタッフを用意して店頭デモンストレーションなどのキャンペーンを行いたいと考えている。
 シェア拡大に伴い、顧客接点ももちろん拡大していくことになるだろう。そこで有効な販路となるのが、ネットでの販売だ。そのための通信販売の受け皿もきっちりと作っていく。ワントゥワンマーケティングとは言うが、店舗が消えてなくなるということはないだろう。ネットで得た情報を店頭で確認して購入するなど、最終的に店頭での販売とネットでの販売が相互乗り入れをし、認知度が上がればいい。

 
<この先へ向けて>
 原点回帰を果たし、ベーシックなスキンケアを強化することに注力するわけだが、安心事業部は話題作りという面もあるため、今後も継続して行う。
 日本は縦に長く、地域毎に様々な特産物や特性がある。それらをコスメサイエンスがOEM受託して製品化し、エルウィンのセルフ市場へとフィードバックさせ、柱のスキンケアとのバランスをうまく取っていくことができれば目指す方向へ近づいていくことになるだろう。
 OEM受託が好調なこともあり、現工場の生産が追いつかなくなりそうな勢いとなっているが、最新の機器を導入することで需要に応えている。今後、シェアの拡大を進めるにあたり、数年内には工場の移設なども視野に入れなければならないだろう。ただ、移転して大型化するだけでなく、製造工程を見学できたり、製造体験ができたりするファクトリーガーデンのようなものができれば、企業の姿勢を多くの人に理解してもらえる場にもなるのではないだろうか。

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