インタビュー『この人と60分』

ライオン/藤重貞慶専務

 −−厳しい時代が続いていますが、経済環境を見てどのように感じていますか。
 藤重専務 回復基調にあるという見方が一般的だが、生活実感としてはほど遠く、個人消費にもつながっていない。日本は循環型経済に入っており、かつ高齢化が進み、総人口や生産人口が少なくなると言う予測のもと、個人の社会負担が増えるため、皮膚感覚として将来への不安が強い。その意味で今後、消費マインドがプラスに転じることはなかなか難しいだろう。


 
−−流通関連でも環境が大きく変わりつつあります。
 
藤重専務 2004年問題とも言うべきことが3点ほどあると思う。1つは、所定労働時間の短縮、パート社員などへ社会保険の適用範囲が拡大すること。企業でも年金負担が増えてくる。2つには、法人事業税の外形標準課税化がある。たとえ赤字であっても、企業規模が大きかったり、人件費の額が多ければ課税対象となるわけで、ここでも納税負担が増える。3つには、消費税総額表示問題がある。ソフトウエアの変更など費用が増えるばかりでなく、値頃感を求かめる中で卸店やメーカーにシワ寄せが来ることは容易に予測できる。これを避ける働きかけもあるが、長期的には影響してくることは避けられないこの3つのどれをとっても、小売業にとって販管費という固定費が増大してくる。

 −−ますます難しい状況が続くようですね、
 
藤重専務 これらを、日本経済に常にある姿と認識して事業に取り組んでいくことが重要になる。
 
−−家庭品の状況はいかがでしょうか。
 
藤重専務 当社が参入している50市場のマーケットサイズは約1兆4500億円と言われているが、96年を100とすると、03年は91〜92となる見込みだ。個数は104〜105と伸びているものの、単価は03年1〜6月で89,7〜10月は88と、一段と下がっている。冷夏・長雨・暖冬の直接的な影響で市場が悪化し、これをカバーするための安売りが増え、メーカーも巻き込まれて激しい競争に陥った。この状況はしばらく続くのではないか。

 −−そうした動向にあって、御社の活動としてはいかがでしたか。
 
藤重専務 家庭品事業の課題として2つほどある。商品という観点では、いかに単価アップさせていくか、同時に価格・市場安定化を図らなければならない。流通については、さらに強いネットワークづくりが必要だと考えている。メーカーの使命として当然、特長のある商品づくりは言うまでもなく、流通に関しては危機感と安心感を共有できるネットワークづくりが現状の困難を乗り越えるキーになる。このネットワークの強化に力を入れていきたい。

 
−−近年は新しい政策の導入で体制の改革が進んできたように思います。
 
藤重専務 家庭品3大政策として、「強い商品づくり」、「強い店頭づくり」、「強いネットワークづくり」を推進してきたが、それぞれに成果が出てきている。商品面では、特長のはっきりした商品をつくることを目指してきたが、「部屋干しトップ」や「しわすっきりソフランC」、「むし歯になりやすい人のクリニカ」、「デンターアミノ」、最近でも「薬用毛髪力イノベート」などが好評で、市場での単価アップに確実に貢献している。例えば「デンターアミノ」などは平均単価を130円から160円程度まで引き上げ、利益商材として小売店の評価も高い。

 
−−商品の育成にも注力してきましたが。
 
藤重専務 ブランドを絞り込み、重点的に育成、投資を行ってきた。00年末には57ブランド404アイテムを抱えていたが、03年6月末には43ブランド371アイテムまで削減した。このうち宣伝対象としているのも01年の21ブランドから19ブランドとなった。この間、宣伝費としては増やしているため、1ブランド当たりの投下は2.3倍にまで高まった。

 
−−商品の価格面についてはどうでしょう。
 
藤重専務 価格安定化の実現についても進めており、01年には取引制度において製販改訂を実施した。過剰だった販促費もカットしている。

 −−「強い店頭づくり」の成果は。
 
藤重専務 スピード、ボリューム、メンテナンスをキーワードに進めている。スピードは新製品を2週間以内に100%配荷しようということ、ボリュームは全国4000以上の店舗に山積展開しようということ、メンテナンスは定番の補充などをしっかりやろうということ。03年はほぼ実現できているので、今年も徹底的に追及していきたい。定番の充実については、流通開発部の中に流通ソリューションチームを設置し、今年は28企業を対象に棚割提案を行った。これにより売上高、利益など売り場生産性が非常に上がってきている。

 
−−ライオン・フィールド・マーケティングによる店頭フォロー体制も強化されてきました。
 
藤重専務 現在、252人の要員で5900店を巡回している。チェーン数で272、全体の45%をカバーしている。巡回している店舗は家庭品の売上高が巡回していない店舗に比べて平均2.4〜2.5%ほど高い。

 
−−流通との関係強化も言われてきていますが。
 
藤重専務 今後、3つの波が流通を襲うと予測している。1つは再編の波で、卸・小売とも全国規模の企業、得意とするドミナントエリアを持ちつつそのエリアを深堀りするスーパーリージョナルな企業、エリアに根ざした営業活動を展開しつつ横の連携によって裾野を拡大するウェルオーガナイズドエリア企業の三層に分かれてくる。卸店に関しては再編も一段落して、これからは機能面での競争に入るだろう。しかし、小売業、とりわけドラッグストア、ホームセンターなどは再編の真っ只中にある。

 
−−しばらくは流通の動きから目が離せません。
 
藤重専務 2つには流通業際化の波がある。業種卸から業態卸への転換ということで、日用雑貨・化粧品卸、薬品卸も食品卸などの壁がなくなってきた。小売業が一括物流を求める傾向にあり、その役割を業界の卸店が担うのか、他業種が担うのかという競争だ。日用雑貨卸の平均粗利率が13%強、食品卸は6〜8%、薬品も8%前後と言われている。しかし、食品卸は機能の一部をメーカーに代替させたりするなどフル機能とは言えず、その意味では日用品・化粧品卸が一括物流の担い手になってくると思う。そうした要請が今後は多く出てくるだろうし、商社の参入も底流となるだろう。3つ目の波として、グローバルスタンダードがある。ビジネスプロセスの世界的な標準化が急速に進んでいる。

 
−−いずれも見落とせない潮流です。
 
藤重専務 これまでは個々の競争だったが、これからはネットワーク間の競争時代に入っていく。ライオンと卸流通が他メーカーと販社のネットワークと競争するという意味もあるし、卸と小売によるグループ同士の競争などもある。このネットワーク単位で顧客満足を実現していく時代と言える。自由に参入したり、離脱したりできるネットワークだが、参入するには自分の技を磨く必要がある。ネットワーク内で認められるには、メーカーなら商品開発を徹底して強くしたり、卸店なら配荷力に磨きをかけるなど、得意技が必要というのが大きな特長。しかも、手を組む相手を間違えてはいけない。

 
−−当然、御社にも当てはまることですね。
 
藤重専務 現状の困難を危機感として、同様に感じることができる企業、課題を解決できるシステムによって安心感を共有できるネットワークが肝要。そうでなければ取り残されてしまう。当社も今まで以上に卸店、小売店とのネットワークをしっかり構築していきたい。

 
−−今後の展開についてはどう考えていますか。
 
藤重専務 量的拡大から質的拡大の時代へと変わっていくだろう。豊かな物余りの時代に生活していく上で、自ら欲しい物がわからない現代と言われている。子供に「10万円あげたら何が欲しい」と聞けば、ほぼ全員が「わからない」「特にないから、とりあえず貯金する」と答える。個人のニーズを的確に掴むことが大切になってくる。当社では家庭科学研究所を生活者行動研究所として、従来の基礎研究、応用研究に加えて消費者の生活行動研究を強化、充実させている。5年先、10年先のライオンを担っていく骨太の新製品の誕生を目指している。

 
−−カテゴリー別に見て厳しいものもあるようですが、その対応は。
 
藤重専務 柔軟剤などは、競合から新製品がでるようだが、当社も機能性の高いアイテムを春より発売する。台所用洗剤は、詰替用にシフトすることで再度、競争力が高まってくるだろう。この春は市場の大きな分野での新製品もあり、その意味での準備はできている。

【2004年3月/社長就任】

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