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【植民地支配、カースト制度、急速な経済成長・・・】
インド及びマレーシアへの視察研修。前回に続き、インド・ムンバイの企業訪問や小売店の様子のほか、世界有数の観光地でもあるジャイプール、アグラ、デリーでの模様を掲載する。急速な経済成長、激しい貧富の差、壮大なスケールの世界遺産…。様々な側面を持つ大国の歴史の重みを、一行は肌で感じたに違いない。
【本紙記者=太田健一】
視察5日目の9日は、パームステアリン及びパームカーネル油から高級アルコールを製造する現地の大手メーカー、ゴドレイ・インダストリーズを訪問。18社からなるゴドレイ・グループの一社である同社は、インドで初めて完全食用油を原料にした石鹸の工業化に成功しており、高級アルコールのほか、各種脂肪酸、工業用及び医薬用グリセリン、アルファオレフィン硫酸ナトリウムなどを製造している。また、グループ会社では石鹸や洗剤、ヘアカラーなどの製品の取り扱いも行っている。一行を迎えたN.B.ゴドレイ マネージングディレクター、マシュー エイプ エグゼクティブディレクター(ケミカル担当)、N.S.ネイバー エグゼクティブヴァイスプレジデント(マーケティング、輸入担当)らが、P&G、ユニリーバ、ロレアルなどのほか、日本の企業とも10年ほど前から取り引きがあるといった同社の概要や、現在、インドでは単一のブランド店やキレイな内装を施したいわゆる「モダン」な店は小売店全体の5%程度だが近い将来10%になるであろうこと、インドの家庭ではほぼ100%が固型石鹸を使用しており、液体石鹸のシェアは1%以下であること、洗濯機の普及率は都市部で10%前後にまで成長しているといった市場背景などを説明した。
続いて、同組合の米田義章専務理事が組合の組織概要や1987年〜2005年の石鹸、洗剤分野の生産量の推移をグラフなどを用いて紹介した。中でも、化粧石鹸市場の減少理由が液体ボディソープの台頭であることや、台所用洗剤市場の減少理由が製品の濃縮化によるコンパクトタイプの普及であることを強調。インドではまったく見られない現象の話とあって、同社幹部の強い関心を集めていた。
質疑応答では、組合側から挙がった「インドの洗剤業界としては、石油系、天然系どちらの原料をメインで使用していくのか」という問いに対し「以前はアルファオレフィン酸をメインで使用していたが、天然系の原料も使い始め、数年後には天然系のものだけになるだろう」と回答。また、「インドでもパームオイルは生産しているのか」という問いには「生産しているが、ほとんどが食用油として使われている。インドではジェトルファーという植物の実に含まれる油の使用が増えている」、また「動物由来の成分は使っているか」という問いには「宗教観からも牛脂などは使用しておらず、植物由来成分の使用が圧倒的に多い」と答えた。
さらに、インドの流通形態を問われ「国内の60万店ほどがディストリビューターと直接取引をしており、それ以外は卸業を使っている」とのことだったが、流通網のインフラが不十分なインドでは、その実態も定かではないようだ。
同社からの質問では「グラフの中にコンディショナーという表記があるが、リンスとは違うのか」、「化粧品を扱う団体などはあるのか」といった日本市場参入への意向を思わせる質問が投げかけられた。
その後、40ヘクタールにも及ぶ工場内のグリセリン、脂肪酸プラントなどを見学した。残念ながら石鹸の生産工場は同地とはかなり離れた距離にあるとのことで、時間の都合上、見学を断念。社内の食堂で昼食をとり、同社を後にした。
ひしめき合う小売店/店員との値段交渉は必須
午後からは、ムンバイ市内の小売店などを見学。インドでは大型スーパーマーケットのようなものはほとんどなく、日本で言うところの商店街や地域店などが主流である。一行が訪れた場所も、一つの軒下に個店がひしめき合っている状況で、食料品から日用品、玩具までが所狭しと陳列されていた。
ちなみに、値札のようなものはほとんど貼られていないが、一件だけ日本のコンビニエンスストアのような雰囲気の店舗があり、そこでパンテーン500mlのシャンプーに180ルピー(約468円)の値札が貼られているのを確認した。その後、違う店舗で同じような商品を手に取ると、店員がその値段の3〜5倍の金額を要求してきた。聞けばインドでは、言い値の6〜7掛けで購入するのが通常なのだという。
<ピンクシティ>ジャイプールを訪問
その後、世界遺産にもなっているチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅や、ムンバイを訪れる要人の歓迎式典に使用されてきたインド門などを見学。その壮大なスケールに圧倒されたが、道中、インドで最も人気があるというクリケットを行っている人が非常に多かったことにも驚かされた。
翌10日は、午前3時過ぎにホテルを出発。強烈なインパクトを残したムンバイを発ち、約1時間半の空路でジャイプールへ移動。ジャイプールは、約10kmの赤い城壁に囲まれているため<ピンクシティ>とも呼ばれている。綿密な都市計画により碁盤の目のように造られた町には、ラージ・プートの王の栄華の跡が今も残っているが、中でも有名なのが1799年、当時のマハラジャ(数いる王の中でも特に権力を持った王)、プラタップ・シンによって造られたハワー・マハル(風の宮殿)。この建物は、王妃をはじめとした女性たちが、夫以外の男性に顔を見られることなく宮殿の外の景色を眺めるために造られたもので、暑い日には涼しい風を吹き込ませる工夫がされるなど、インドの歴史と伝統、建築技術の高さを感じることができた。
また、何十頭にも及ぶ象のタクシーが有名なアンベール城、今でもマハラジャの子孫が生活しているというシティ・パレス、現在でも正確な時間を刻む日時計や天文観測の装置が設置された1734年完成のジャンタル・マンタル(天文台)などを訪れた。
昼食後は、230km離れたアグラへバスで約6時間かけて移動。当然、インドの舗装状況、交通ルールは日本に遠く及ばないものであり、極端な悪路をクラクションが鳴りっ放しの中での移動となった。ここで、一行はまたもインドにおける新しい一面を見ることとなる。ムンバイ、ジャイプールはある程度の富裕層もおり、歴史のある街であったが、アグラへの道のりとなるインド北部は砂漠も多く、ラクダや牛、ヤギの群れは当たり前の光景。一見、アフリカのサバンナ地帯を連想させるこの光景は、殺伐としたムンバイの後だっただけに、より一層鮮明な印象を持った。
アグラには午後8時近くに到着。宿泊先のホテル「ムガール シェラトン」で小憩後、近くのレストランで夕食となった。落ち着いて夕食を採れるのはこの日が最後となることから、解団式を兼ねての席となり、強烈な輝きを放ち続けたムンバイ、ジャイプールでの思い出話に花を咲かせた。
世界最大の大理石建築タージ・マハルに感動
7日目の11日は、午前中よりアグラを観光。アグラは、16世紀から17世紀にかけて極めた栄華を今でも色濃く残しており、インド有数の観光地が多いため、海外からの観光客も非常に多い。一行は、インドで多くの人々を引き寄せてやまない白亜のタージ・マハルや、今でも軍用地として使用されているアグラ城などを見学。特にタージ・マハルは、1631年から22年間かけて建設されたという世界最大の大理石建築で、その伝統とシンメトリックの美しさが醸し出す存在感は間違いなく世界でもトップクラスにある。さらに、ムガル帝国第5代皇帝とその妻の棺(レプリカではあるが)が置かれている墓室は土足厳禁であることからも、その威厳さを感じることができよう。
昼食後、今度はアグラからバスで約4時間、200km離れたデリーまで移動した。インドの首都デリーは、90年代の経済開放化の推進で著しく発展しており、地方からの人口流入もあって、市街部及び郊外まで開発が急ピッチで進められている。交通量はムンバイと同じく激しいが、二輪車の乗用に関してはヘルメットの着用が義務づけられるなど、<「ノーヘル」ライダーだらけだったムンバイとは大きな違いがあった。
最後の見学地となったデリーでは、第1次世界対戦の戦死者を弔うために建立された高さ42mのインド門などを見学。豪華なインド料理を堪能した後、空路、マレーシア・クアラルンプールへと機中泊で戻り、成田空港組は帰路へ、関西空港組は便の都合上、さらに機中1泊しながら帰路へと着いた。
ユニリーバが圧倒的なシェア誇る日用品市場
インドの日用品マーケットは、04年における金額ベースで洗濯石鹸が11億200万ドル、身体用石鹸が9億8900万ドル、オーラルケアが5億3700万ドル、スキンケア・コスメが2億7400万ドル、ヘアケアが8億3100万ドルとなっている。主要メーカーはユニリーバ、P&G、ニルマ、ゴドレイなどだが、圧倒的に強いのはユニリーバである。
分野別に見ると、シャンプーのマーケットサイズは日本の年間30万トンに対し9万トン、そのうちユニリーバが5万トンのシェアを持っている。しかし実際は、9割以上の国民が頭皮の洗浄に石鹸を使用しており、特にハーブがフケ止めに効果がるということから、ハーブ入り石鹸を「髪の毛用」としている傾向が強い。
身体用洗浄剤についても、やはり石鹸が主流で、規模は年間60万トン。ユニリーバが35万トン、ニルマが15万トンで、一人当りの石鹸使用量は年間600gだという。
同様に衣料用も固型洗濯石鹸の使用がメインだが、前述のように、都市部では洗濯機の普及率が増加していることから、粉末の使用が年率約10%アップで上昇している。
成長著しいインドのトイレタリー、日用品市場は、今後も拡大が続くと見られる。その要因としては、人口10億3000万人の約半分が25歳以下であること、年収2000ドル以上の中流層が3億人以上いること、地方都市への流通整備が少しずつではあるが整備され始めたこと、市場の大半を占めるノンブランド品からブランド品への切り替えが始まっていることなどが挙げられる。しかし、一番の要因は、国民に「消費者意識」が芽生え始めたことだろう。来年には米ウォルマートがインドに進出することもあり、この意識が高くなればなるほど、インドのトイレタリー、日用品市場の拡大は加速するはずである。
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視察前、インドに関して「現地の水は絶対飲んではいけない」、「狂犬病を持つ犬が多くいる」、「蚊に刺されたらデング熱が発生し、死に至る」など、よからぬ噂を多数聞いた。さらに、7月に随一の商業都市ムンバイで列車爆破テロが起きるなど、不安を一層かき立てられた。一方では、「経済発展が進んで街も整備された」、「日本人はじめ海外からのビジネスマンが多く治安も悪くない」、「品のいい顔立ちをした美人が多い」などの情報も耳にしていた。
今回の視察を通じ、メンバーがそれぞれ感じたことは多種多様だと思うが、共通していたことは、インドの混沌とした「熱さ」を肌で感じたことではないだろうか。高級ホテルや高層ビル、民族衣装を着たきらびやかな女性やIT長者といった華やかな一面に、路上生活を余儀なくされる人々やバスに駆け寄る物乞いの親子など暗い影を落とす一面…。「インド経済について理解を深めると共に、石鹸洗剤市場並びに高級アルコールなどの生産状況について調査する」ことが主目的だった今回の視察であったが、時代の変化が生み出した幾多の表情に、一行は魂を揺さぶられたに違いない。
【了】
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