●海外レポート

第3回

随一の国際貿易都市 〜インド・ムンバイ〜

【急速な経済成長と不十分なインフラ】

 インド及びマレーシアへの視察研修。3回目となる今回は、11月7日から10日まで4日間滞在したインド・ムンバイでの模様を、国内の経済動向、インフラ状況などと合わせてお届けする。国内最大の貿易都市ムンバイとは、果たしてどのような都市なのだろうか。
【本紙記者=太田健一】

 日本の約8倍となる329万平方キロメートルの国土を持つインド。人口は中国に次ぐ世界第2位の10億2880万人、そのうち25歳以下が50%を占めるなど、今後高齢化社会が本格化する日本とは逆の現象となっている。
 気候は、1年の半分を雪に閉ざされる北部の山岳地帯もあれば、年間の平均気温が30℃を下らない南部の海岸地帯もあるなど、地域によって大きく異なる。人種、言語、文化も多様で、英語をはじめ、ヒンディー語、カシミール語など数百にも及ぶ言語が使われているという。宗教はヒンドゥー教の人口比約80%を筆頭に、イスラム教13%、キリスト教2・3%、仏教0・8%、そのほかゾロアスター教やユダヤ教など、さまざまな宗教が信仰されている。
 インド随一の国際貿易都市であるムンバイ(旧ボンベイ)は現在、1600万人余りの人口を抱えている。高層ビル、高級ホテルが立ち並び、スーツ姿のビジネスマンが多い一方、インド門や世界遺産のチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅など伝統ある建築物も数多く立ち並ぶ。しかし、宗教的な思想の違いや、カースト制度、民族間による問題がまだまだ残っており、路上生活を余儀なくされる人も多数存在するなど、貧富の差は歴然。インドの歴史と混沌を凝縮した都市といえよう。治安においても不安が残り、今年7月には市内の列車に対する連続爆破事件が発生、180人以上が死亡するというショッキングな事件も起こっている。

 経済成長支えるIT、自動車、農業
 インド経済は、2003年に8・1%という高度成長率を記録。2050年までに経済大国になると予測されるBRICs(ブラジル、ロシア、中国)の1つとして、注目を集めている。IT産業が急速に発達し、先進国の「ITアウトソーシング基地」とさえ言われている。自動車、二輪車産業も著しい伸びを示し、自動車生産台数は120万台、二輪車は600万台に達している。特に二輪車については中国に次いで世界第2位。
 しかし、実は経済成長の動向を大きく左右しているのは農業とも言われている。同じBRICsの中国とよく比較されるインドだが、中国と大きく異なるのは農業が経済に占める重要性。国土は中国の約3分の1程度しかないが、国土の60%が農耕に適しており、耕地面積は中国の2倍。農業がGDPに占める割合は25%で、人口の7割が農村に住み、6割が農業関連の仕事に従事している。急速な経済成長を担ったIT関連産業と農業がどう共存して発展していくかが今後の課題であろう。
 鳴り続けるクラクション、交通量の多さに唖然
 視察3日目となった7日、一行はマレーシア・クアラルンプールから空路で約5時間、インド・ムンバイへと渡った。現地に到着したのが午後11時を回っていたにも関わらず、ムンバイ空港は出迎えのためか、大勢の人が押し寄せており、専用バスで向かった宿泊先のホテル「ジ オベロイ」までの約1時間の道中も、老若男女に関わらず、無数の人々がまるで昼間のように活動する姿には唖然とさせられた。さらに、交通量が多い上、ルールも明確なものがなく、クラクションがけたたましく鳴り続ける騒然とした雰囲気には嫌が上にも「この国はなにかが違う」という期待感を持つと同時に、強烈な不安感にも襲われた。
 翌8日は、午前中に、単一のブランド店が集まる複合施設を2件訪れたが、開店が午前10時というのにもかかわらず、店舗はすべてクローズ。関係者によると、だいたい正午過ぎに開店するとのこと。インド視察の初日において、お国柄を強く感じさせる光景に出くわす格好となった。

 インド最大の化学展示会を訪問
 その後、BSE(ムンバイ証券取引所)を訪問した。BSEはインド最大の証券取引所で、その設立はイギリス植民地時代の1876年。ロンドン、ニューヨークに次いで世界で3番目、アジアでは最も古い歴史を持つ。取引規模は世界第3位。まず、一行を迎え入れたC・バスデバン ゼネラルマネージャーが国内の経済状況や、同取引所の概要などを紹介した。その中で、直近2年間で自動車や携帯電話の消費が活発化し、携帯電話の使用者が4000万人に達していること、外国からの投資が増加し、この9カ月間で150億ルピー(1ルピー=約2・6円)の投資があったこと、野村証券グループが半年ほど前に単独ファンドで企業設立したことなどを説明した。また、電力供給が不十分であるという国内の現状に触れ「現在、本来あるべき電力より20〜30%不足している。高速道路の整備も2年間である程度整備できたという実績からも、3、4年間で電力問題は解決するだろう」と展望を述べた。
 午後からは、インド最大の化学業界の国際展示会「インディア・ケム」を訪れた。この展示会は2年に1度開催され、3回目の開催となった今回は、日本をはじめ、アメリカ、中国、ロシア、ドイツ、イタリアなどから300社を超える出展があった。日本からは、同組合の賛助会員でもある川研ファインケミカルや、今回の視察メンバーにも入っている丸紅ほか、ジェトロ、帝人など30数社が出展。各社ともアジアに続き、インド進出へのトライアル的な出展という位置づけをしており、インドではまだ馴染みの薄い界面活性剤のサンプルなどを展示していた。また、チッソがし尿処理施設や下水処理施設など、積水ケミカルが自動車に使う断熱材やフロントガラスなど、インドで今後一層の需要が予測される商材を大々的に紹介していた。

 ウォルマートが進出
 高い経済成長率ばかりが注目されがちなインドだが、大きな問題の一つにインフラの整備が挙げられる。例えば電力の供給も不安定で、電力安定化装置を使用している家庭もあるという。また、道路事情も悪く、凸凹な上、さまざまな部品、用品が路上に落ちている光景を目にした。水道も、浄化はもちろんのこと、給水も不十分。湾岸設備も少ないため、工業地帯から湾岸までの陸路運送にも多くの時間がかかるという。
 そのような中、米ウォルマートが来年、インドに進出するという。インドでは単一のブランドを扱う専門店を除き、小売業への外資参入を認めていない。そのため、インド国内で携帯電話などを扱う大手企業グループがフランチャイズ店舗を展開し、ウォルマートが仕入れや物流などの業務を担当する。
 前述のようなインフラの未整備に加え、従業員のストライキなども多いというインド。事実、スズキやトヨタなどの自動車メーカーが数カ月に及ぶストライキを経験している。経済自由化が本格化した91年度から05年度までの、日本からインドへの直接投資額は米国、英国などに次いで大きい。この額はインドに対する海外からの直接投資額の4・1%を占めている。ウォルマートの動向いかんでは、日本企業の投資、進出に拍車がかかるかもしれない。

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