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視察団一行はニューヨークを後にし、水と緑が美しく“1万の湖がある”と言われるミネアポリス市(ミネソタ州)に向かった。日本との時差は、夏時間採用時でマイナス14時間。緯度で言うと北海道の旭川よりやや北に位置するが、視察の日は「こんな夏は初めて」と地元の人が言うほど暑かった。
ミネソタ州は白人が65%強を占め、元アメリカ副大統領のモンデール氏(後に駐日大使)やミュージシャンのプリンス、人気漫画ピーナッツシリーズで有名なチャールズ・シュルツ氏の出身地でもある。ミシシッピ川をはさんで、ルイ・ヘネピン牧師が1680年に発見した力強い滝「セント・アンソニー・フォール」に起源を発するセントポール市があるが、ミネアポリス市と合わせて通称「ツインシティ」と呼ばれている。
かつて、穀物ビジネスが盛んだったミネアポリスは、大型スーパーのターゲットやリテイルサポートカンパニーであるスーパーバリューなどの創業の地である。スーパーバリューについては、改めて「企業訪問編」で紹介するが、今回は、そのスーパーバリューが支援するスーパーマーケットのコワロスキー、バヤリース、カブフーズの各店と、アメリカ最大のエンクローズ型スーパーリージョナルショッピングセンターであるモール・オブ・アメリカを視察した。大手チェーンが強いこの地で、中小スーパーはどう頑張っているのだろうか。
コワロスキー(ミネアポリス市・エデンプレイリー)
◆スーパーバリューの支援で成長
高級感漂うコワロスキーは、スーパーバリューが支援しているアップスケール型マーケット。大手チェーン同士の競合が厳しい市場において、独自の店舗差別化戦略を展開するローカルチェーンだ。ここでは、アシスタントマネージャーのカイル・ライリー氏とスーパーバリューのスティーブン・シュマッカー氏が出迎えてくれた。
支援するスーパーバリューは、「小売業の成長が自社の成長」を信条に掲げている。もともとが卸売業でありながら、自社チェーンも1500店ほど持っており、売上高は、55対45程度の割合で小売業の方が高い。これらの自社チェーンにおいて、カテゴリーマネジメントやアイルマネジメントを駆使した独自のマーチャンダイジングを企画・提案し実行に移す。そしてその成功例により実証されたプログラムを、コワロスキーのようなローカルチェーンに還元しているのだ。
◆提案型の売り場
訪問した店は、売りに出されていた古い店舗を2004年12月に買い取った上で大幅にリニューアルした新しいもの。しかし、わざとレトロ調のウッディに作り上げているのが興味深い。
見事な陳列が売りで、プライベートブランドも展開。顧客には富裕層が多く、低価格訴求型店とは一線を画している。食料品売り場には、料理のレシピや「パーティプランニングガイド」の他、それぞれのカテゴリーでの売り上げトップ10を掲載したリーフレットや、今晩のおかずを考えるヒントを書いたサービスカードが置いてある。広い店内で大きなカートを押しながら今晩のおかずを考えるアッパーミドル主婦が、ストレスなく買い物ができる環境を提供する工夫が見られている。ここも、ニュージャージーのウォルマートと同じく、レジ待ち客用のミニ売り場がレジの数だけ設置してあり「最後のついで買い」を促す仕組みを採用している。
バヤリース(ミネアポリス市・シャンハッセン)
◆「衝動買い誘発」を徹底
次に訪問したのは、アップスケールな大型店のバヤリース。ここでは、ゼネラルマネージャーのパティ・ホートン氏が出迎えてくれた。地域に23店舗を展開し、うち3店舗は以前にリックスというチェーンから買収し改装している。
視察した店は2年前にリモデルしており、売り場面積は約1500坪。広い通路にはカーペットが敷かれ、シャンデリアとともに高級感と清潔感を漂わせている。従業員は320人で、365日24時間営業。1日約2500人〜3000人が来店するという。多彩なグルメ商材、高い品質、顧客サービスの質で消費者から高い評価を得ているのが特長で、最近ではオーガニック、ナチュラルフーズ、ケータリングサービスからクッキングクラスの教室まで導入している。
品揃えは日用品や食材から、皿や調理器具などのホームウェアまで販売。プライベートブランドに関しては、充実しているが数は多くない。その代わり高品質を売りにしており他店などにも提供、特にスープは多くのレストランが仕入れるほど好評である。
◆完結した小さな商店街
棚割りテクニックも抑えていて、定番棚にはドッグフード、エンドには柔軟剤、そしてエンド横には調理器具―といったように「衝動買いを誘発する棚割り」をすべてのエンドで実施。食材売り場ではコワロスキー同様、パーティーの献立やオーガニックサラダの作り方などが書かれたオリジナルの小冊子が置いてあるが、こちらは写真つきでより視覚に訴えている。
店内には他に、リカーショップ、血圧チェック計コーナー、銀行、目の前でシェイクを作ってくれるジューススタンド、カフェテラス、ベーカリー、ケーキコーナー、生花店、調剤薬局など、小さな商店街として完結されている。一角には総菜コーナーもあり「シャンハイサーカス」という名前の中華惣菜屋が印象的だった。出口では、雨の日用に駐車場のマイカーまで自由に使える傘のサービスを行っている。
実はすぐ近くに、次に紹介するカブフーズがあるのだが、マネージャーのホートン氏は「うちの客はカブスフーズに行かないし、向うの客はこちらに来ない。きちんと住みわけがされている。ライバルを挙げればコワロスキー」だという。
カブフーズ(ミネアポリス市・シャーウッド)
◆直営店からフランチャイズ制へ
スーパーバリューのカテゴリーマネジメント実践店。元々はスーパーバリューの直営店だったのだが、フランチャイズ制に変更して各店舗に権限を与え拡大してきた価格訴求型スーパーだ。「カブフーズ」と言っても食品専門店ではない。
ミネアポリスとセントポールを併せた“ツインシティ”には51店舗を展開。訪れた店の広さは1300坪程度、従業員は150人で年中無休だ。アメリカは、あちらこちらの卸店からは仕入れない「プライマリーホールセラー」が基本で、カブフーズも商品の約7割はスーパーバリューから、残りは別の卸店から仕入れている。
出店当初は「ウェアハウスストア」(倉庫型店舗)と言われ、広い店舗と通路、高い天井と壁に積まれた商品が消費者の心を引きつけた。しかし最近ではその形態の店が増え差別化が図りにくくなったこともあり、スーパーセンターへ業態転換。今では「コンベンショナルストア」と呼ばれている。
応対してくれたストアディレクターのロビン・ゴート氏は「大手のレインボー以外に、コワロスキー、バヤリース、ターゲット、今度進出が予定されているウォルマートスーパーセンターがライバル」と言う。この地域の激戦が予想されるとともに、スーパーバリューの支援企業同士の競合にも興味をそそられる。
◆価格訴求型だがサービスも
プライベートブランドはアイテムの15%程度と多い方だ。ちなみにアメリカでは、PBの比率は25%が限度と言われているが、欧州では平均で25%〜30%、多くて60%が限度と言われており、お国柄の違いが出ていて面白い。
店内には、その日のセール品告知POP以外にも、至るところに「Cub is Lower Every Day」(カブは毎日、より安く)と掲示がある。そして「ウェアハウス」(倉庫型)の名残りか、カートでの大量買いに向いている広い通路。壁際の棚は天井まで届いており、とても客には届かない高さに箱ごと商品積んである。欲しい時には店員に取ってもらうわけだが、これは一種のディスプレイになっているようだ。
低価格志向とは言え、やはり「凝縮商店街」である。バヤリースなどと同様、銀行やファーマシーもしっかり揃っている。そして意外だったのはレジ係のルール。空いているレジの店員は、レジの中から売り場側に出てきて顧客に手招きしている。一目で空いているレジがわかるので、客はわざわざレジを探し回る手間が省ける。多くのレジが並ぶ広い店舗ならではの親切なサービスだ。
モール・オブ・アメリカ(ミネアポリス市・ブルーミントン)
◆4つの百貨店と520の店舗
アメリカには約3万3000店のショッピングセンターがあり、そのうちリージョナル型といわれるものは約3000店。そして、アメリカ最大のリージョナル型ショッピングモールが、ここミネアポリスにあるモール・オブ・アメリカである。1992年8月、980億円の総工費を投じて、大リーグ・ミネソタツインズのホームグラウンド跡地に建設された。
延床面積38万1000m2は、ニューヨーク・マンハッタンの総小売面積をほぼカバーする広さ。巨大モールの中央部は、スヌーピーの生まれ故郷らしく「キャンプスヌーピー」というアミューズメントセンター(玩具のレゴブロックによるテーマパーク遊園地)でにぎわっている。周りを3層構造のフロアが囲んでおり、エレベーター15基、エスカレーター44基で貫かれている。角部分にはノードストローム、メイシーズ、シアーズ、ブルーミングデイルズの4つの百貨店。間をつなぐ店舗街には約520店舗もの大小さまざまな専門店、レストラン、映画館などが並び、すべての通路の合計は5・6ワにもなる。日用品、化粧品から1ドルショップ、洋服、靴、本、フードコート、スポーツ店、バーチャルリアリティアミューズメントなど、あらゆる生活日用品をカバーしており、小さな町の商店街あたりよりも充実していると言っても過言ではない。
◆世界を感じるスケールの大きさ
買い物客は半径600ワの商圏から年間2700万人が訪れる。アメリカのみならず、世界最大のモールがある隣国カナダを始めとする世界中のから約4000万人を集客。これらの来場客は一人当たり7040円(本紙推計)を使い、滞在時間は5・1時間にのぼる。アメリカ国内のショッピングセンターの平均がそれぞれ一人当たり3910円、滞在時間1時間という数字と比較すると、スケールや魅力が想像頂けるだろうか。
1カ月に排出されるゴミの量はなんと500トンで、そのうち半分はリサイクルに回されるという。このスケールには、嫌でもアメリカを感じずにはいられないが、ショッピングセンターとして参考にするとすれば、複合施設の進化形、もしくはスケールメリット追求の最終形と言ったところだろうか。いずれにしても、とても1日で回り切れる大きさではなく、言い方は乱暴だが“ひまつぶしには持ってこい”の施設であった。
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