圧巻!「全米ハードウェアショー」の迫力

 シカゴで開催された世界でもトップクラスの開催規模を誇る展示会「全米ハードウェアショー」を取り上げる。主催者が開設しているホームページによると、金物類・DIY・建築業界では西半球で最大のトレードフェアで、これら製品の世界的ショーケースとして広く認識されていると紹介されている。その紹介が果たして本当のものかどうか、実際に自分の目で確かめるべく、視察団は会場を目指した。

■巨大な施設、巨大な展示
 ケタはずれに大きな展示会の会場となったのは、この街が誇る大規模なコンベンションセンター「マコーミック・プレイス」。展示会場だけで20万Fという巨大さは、日本における展示会のメッカ「東京ビッグサイト」の約2.5倍に相当する。
 あまりピンとこないかもしれないが、数字だけを挙げておけば、出展社数は約3500社、その2割は海外からの出展。期間中は世界100カ国以上から7万人もの来場があるという。開催される週は「国際ハードウェア週間」と名付けられ、これを目当てにした人々がシカゴ市内を埋め尽くすというのは決して大げさな表現ではない。事実、ショッピング街にはショーの入場パスを首からぶら下げた人があふれ、宿泊したホテルなどは視察団と同じ目的の人間ばかりだ。こうした現象はハードウェアショーだけでなく、大規模なイベントが開催されるたびに見られる風景だと、ホテル売店の黒人女性がと教えてくれた。
 シカゴにとってシンボル的存在として位置づけられるのシアーズ・タワーから南へ約3キロほど行くと、ミシガン湖に面したその会場が目に飛び込んでくる。乗り込んだバスの中からでも、そのスケール感がひしひしと伝わる。
 事前に配布されたガイドブックにしても、A5版程度の大きさながらも総ページ数は1000ページ弱というもの。それでいて中味はといえば、申し訳程度の広告と、あとは出展社を紹介した活字が羅列されているだけというシンプルさ。その情報量にも圧倒されるが、これを片手に会場内を巡るのは困難と思われるほどの重量だ。
 すでにこの時点で白旗をあげたくなりそうな気分で会場内に進むと、日本の展示会では考えられないほど厳重なボディチェックに遭遇する。慣れない日本人にとっては、あまり気分の良いものではないが、これもまたお国柄というところか。
 視察に際しての注意事項、集合時間など連絡事項を確認して、あとは各自で見学に向かうばかりとなったメンバーたちだが、最初にどこから手をつければよいのか悩む人がほとんどという有り様。非常にわかりにくい会場案内表を囲んで、これを解読するところからスタートする事態となった。
 

■積極性なし・・・?
 結局、どこに何があるのか理解できないまま、行き当たりばったりで見始めることにしたが、最終日の午前中ということもあって場内は閑散としていた。会場は大きくは東館、北館、南館に分かれ、それがさらにカテゴリー別に分類されている。
 最初に入ったところは、塗装・住宅装飾品がメインとなっていた。この展示会で出展されている物の中では比較的アイテムが多岐にわたる細かな商材だ。とはいえ、展示そのものは圧巻で、出展量の多さやカラフルな色使いに驚く。たとえアイテム数が少ない出展社でも、1つの製品を大量に展示して人目を引こうと工夫している。色使いについては、カラフルさを前面に出した製品が多いこともあるが、それを飾るPOPなども輪をかけて派手。日本では敬遠されがちな原色も、必要以上に目につく。
 一方で、こぢんまりした展示がないわけではない、1坪ほどのスペースに数品のみを展示して、たった1人でブースを管理しながら来場者に商品を説明していたところも見受けられた。ただ、そのほとんどが独自性の強い商品らしく、何に使うのかすら理解できないのは我ながら情けない限りだ。
 さらに気がついたのは、
サンプルの配布が少ないことと、よくありがちな女性コンパニオンの姿が見られないこと。出展物とは無関係のミネラルウォーターやアメ玉を配るブースはあったが、出展社側から積極的に商品やサービスを売り込むという姿勢は見られない。実に不思議に思ったが、数人、数十人のスタッフで7万人も相手にできないという物理的事情があるのだろうか。訪れた客が興味を示したり、オファーがあってから商品説明を始めるケースが目立った。
 単なる商品紹介ではなく、実際にビジネスに直結する相手だけを選んでコミュニケーションを図っているようにも思えた。こちらと目が合っても微笑むばかりで、話しかけてくることもなく、パンフレットをむやみにに配布するようなこともない。記者の入場パスには「インターナショナル・ビジター」と表記されていたが、ビジターではなく「バイヤー」とでも記されていれば違った対応になっていたのかもしれない。あるいはどこから見てもアジア人というこちらの風体が災いしたのか。いずれにしろ、1人でも多くの客を取り込もうとする日本の展示会に慣れているこちらにとって、いささか拍子抜けしたことは否めない。

■閑話休題 「エクスプレス」の意味
 当初は静かだった会場内も、時間の経過とともに来場者の数が増し、ようやく賑やかさを見せてきた。そんな中、昼食のために地階のフードコートへ足を運んでみた。
 ほとんどがファーストフードの店で占められた一帯は、どこに隠れていたのかと思えるほどの人が押し寄せていた。別の場所にはうどんや中華料理を売る店もあったが、味が容易に想像できそうな臭いを理由に立ち寄るのを止めた。
 そこで郷に従いハンバーガーかピザでもということになったのだが、これがまた長蛇の列。店はどこも決まって「○○エクスプレス」と名付けられているが、どこが特急なのかと思うほど店員の動きは緩慢だ。客はといえば、そんな進まない列にあってイラつくこともなく、時には談笑しながら並んでいる。「行列のできる店」というのは有名店と相場が決まっているが、ここでは完全にあてがいぶちに過ぎない。これだけ世界各国から人間が集まっていても、日本人以外は自分の順番が来るのを楽しむかのように過ごしている。ゆとりと言うべきか、日本人がせっかちなのか。ともあれ、予想通り大型かつ大味のピザで腹を満たし、引き続いて別の会場へ足を運んだ。

■リスと鹿の秘密
 いくつかの会場を見て回って、日本には決して存在しないと思われる製品をいくつも見かけた。
 例えば、パッケージにリアルなリスの絵がデザインされた忌避剤(リス避け)がある。アウトドアのコーナーにさりげなく並んでいたのだが、この国のアウトドアの定義というか感覚は日本と異なるようだ。ステーションワゴンや4WDの自動車に乗って遠出し、普段は味わえない自然を満喫するというところまでは同じだが、製品のパッケージには「自宅用」と書かれている。
 しばらく考えるうちにわかったのだが、アメリカでは一般家庭であっても大きな庭があり、そこでバーベキューをしたり、仲間を集めてパーティしたりすることが珍しくない。すなわち、アウトドアライフを自宅の庭で楽しむ習慣があるわけだ。その庭にリスが出没するということも日常茶飯事なのだろう。しかし、その隣に鹿の絵のパッケージと熊の絵のパッケージをあしらった袋を見つけてしまった。少し恐ろしさを感じる。
 生活環境の違いといえば、プールに関する商品も少なくなかった。代表的なのは水を消毒する塩素剤が、大小さまざまなサイズで並んでいる。また、日本でも人気の高いアウトドア関連ブランド「コールマン」のグリルなどが多数陳列されていたが、こちらの仕様はまるでシステムキッチンのよう。メンバーの1人はこれがいたく気に入ったようで、出展社のスタッフに「サンプルが欲しい」と無理難題をふっかけていたが、もちろん叶うことはなかった。
 会場の一角には「新製品コーナー」が設置されており、各社の自信作がずらりと500アイテムほど並んでいる。しかし、ここでも不可思議な商品が多かった。また、ガードマンの目が一段と光っており、写真撮影はおろか、その場でメモでもとろうものなら、吹っ飛んできて早口でまくし立てられる。知的財産権が守られている国であることを、こんなところから実感できる。
 結果的に視察に費やした時間は約6時間ほどだったが、当初からの予想通り、全ての会場を巡ることはかなわなかった。他の会場を巡ってきたメンバーにで聞いた話では、中国や香港、韓国などアジア各国の企業がこぞって出展していたエリアもあったという。しかし、残念ながらそこに日本企業の名はなかった。世界各国で開かれる自動車、家電、パソコン、玩具などの展示会のように、いつかは日本企業のブースに人だかりができるようになるものと期待しつつ会場を後にした。

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