家電小売業「ベスト・バイ」店舗&物流施設

 今回は、米国家電業界で最も注目を集めるカテゴリーキラー「ベスト・バイ」についてレポートする。ミネアポリスに移動した視察団は、ここを皮切りに各所を訪れることになったが、大規模かつ効率的な運営ぶり、米国流通業における物流最前線を目の当たりにして驚きを隠せなかった。決して派手さはないものの、現状や地域事情に合わせた展開を実感できたことは貴重な財産だ。

 
■竜巻転じて急成長
 「ベスト・バイ」は1966年、当時「サウンド・オブ・ミュージック」という店舗からスタートした。ここではレコードやステレオ、小さな楽器などを主力製品とする、いわばどの街にもあるような店だったという。
 1981年までに12店舗に拡大したが、それもミネソタ州、ウィンコンシン州にのみ展開するにとどまっていた。しかも、この年に現地を襲った竜巻によって、最も業績に寄与していた店舗が崩壊、同社としても大きな打撃を受けている。
 しかし、これを逆手にとり「トルネード・セール」と名付けて特売を仕掛けたところ、これが大当たりする。この時の様子を知る担当者は「長い行列が店舗の周りにでき、商品はまたたく間に売り切れた。足りなくなった商品は他の店から補充しなければならないほどだった」と振り返る。そして、それが現在のウェアハウス、すなわち倉庫タイプ店舗による販売のヒントになったというから、世の中何が幸いするかわからない。
 これをキッカケに店舗名も「ベスト・バイ」に変更、統一した。いまでは、アメリカの家電小売業界における低価格販売、倉庫型店舗の代名詞的存在として位置づけられ、消費者に広く根付いている。
 1983年、その1号店をオープン、当時としてはかなり大型の1000Fという店舗面積を誇っていた。「コンセプト氈vと呼ばれるタイプの店舗だ。1987年には中・北部地域に40店舗を展開するまでになった。視察団が訪れたセンターは、その40店舗カバーしていたところでもある。
 さらに1989年には「コンセプト」の店をイリノイ州ロックフォート市にオープン、こちらは3000Fという規模だった。これを境にして同社の収益力も大きく向上し、5億ドルだった売上高は1992年には10億ドルを計上するまでに成長した。
 その後も同社の躍進はまだまだ止まらず、1994年に「コンセプト。」として5500Fの店舗を開いた。と同時に、消費者との間で商品に関する情報交換ができるようにもなった。


■デザイン重視の「コンセプト「」
 1998年に打ち出した「コンセプト「」では、これまでとは異なり店舗デザインを重視している。店内の売り場を見やすく、買いやすくすることが目的だ。各種の案内板が陳列を邪魔しないよう工夫し、より消費者の利便性を追求しようという姿勢を表している。
 また、「コンセプト。」による店舗で大きさばかりを追求した結果、むしろ不便さを感じる客が少なくなったということだろう。いくらアメリカとはいえ、何でも大きければいいというものではないことは、このケースからも想像できる。そこで同社は、「コンセブト「」での店舗面積はやや縮小気味にして、規模による売り上げ追求から、より満足度の高い店舗づくりへと転換を進めている。その詳細は省くが、日本でも家電小売業界らの注目を集めていることは確かだ。
 一方、昨年には、より小さな地域市場をターゲットにして9店舗ほどオープンした。小さな市場と表現したが、その対象人口は20万人程度という。こうした話を聞けば、やはりスケールの大きな国との印象を変えることは難しいだろう。それでも、同社なりのキメ細かな展開によって、さらに成長力に加速がつくものと見られている。フォーチュン誌の売上ランキングの上位500社に入ってきていることも、そうした勢いを表しているといえよう。
 「ベスト・バイ」の店舗数は約350。これが全米39の州に広がっている。売上高は125億ドル、純利益は3.5億ドルを誇る。2000年にはさらに50店舗が開店した。


■広い構内に機会の音だけ
 一大勢力として確立したこの家電小売業が抱えるディストリビューション・センター(DC)は、リージョナル・タイプ(RDC)が6拠点、それ以外に16拠点を数える。消費者へダイレクトに大型製品の配送を行うこともあり、さらに増やしたい考えだ。
 訪れたのはRDCの中でも最小の規模ということだが、それでも約4万Fという規模に圧倒され、最大のRDCに至っては9万Fと説明されて二度驚いた。扱う製品が家電ということを差し引いても、余りにも大きな施設だ。
 実際に構内を見学する機会に恵まれたが、ここでは225人の従業員が働いている。週5日勤務が基本ながら、繁忙期には6日勤務になるという。現在の在庫高は約8000万ドルで、検品時の誤差は0.02%にとどまっている。通常の作業中でも検品が可能な仕組みも作り上げている。
 物流の仕組み自体はそれほど驚くべきものではないが、従業員のスキルの高さがうかがえた。構内を走るフォークリフトなどの移動スピードはかなり速く、また、動きに無駄がほとんどない。私語をかわす人もなく、機械の音だけが広い構内に響いている。黙々と自分の担当作業をこなしていく人間と、淡々と動く設備の融合とでも言うべきか、アメリカならではの必要以上に明るい職場を想像していたこちらにとっては、ちょっとしたカルチャー・ショックに近いものを感じた。ただし、倉庫独特の暗いイメージは微塵も感じさせることがない。
 少しばかり乱暴に荷物を扱う部分は気になったが、お国柄ということで納めることができる程度。むしろその乱暴さが「働く男」としての魅力(女性は一人も見かけなかった)を増幅させていたのは印象的だ。
 あえて設備面の細かな部分に言及しないのは、こちらが素人ということもあるが、これより進んだシステムを構築している日本の流通業者があると判断したためである。ただ、それを補って余りある強いパワーとスケールの大きさが、同社の物流を支える原動力なのかもしれない。

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